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-へっどらいん-
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見える先輩…

引用元: 死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?243


いわゆる「見える」先輩と建築現場回りをしていたときのこと。

もうだいぶ寒くなっていた時期でもあり、日が落ちるのも早かった。
その日も現場回りしているうちのすっかり暗くなってしまっていた。

とりあえずその日の仕事は終え、俺は事務所に車を走らせていた。
となりでは先輩がダッシュボードに足を組んで寝息を立てている。
起こさない程度にカーステで音楽(RIP SLIME)をかけ、あくびを噛み殺しながら運転をしていた。

近道のラブホ街を通り、高速沿いの道を進む。平日なのにラブホは盛況だ。
「あーあ」ため息も漏れる。「こっちは仕事中だっつうの」よくわからん愚痴がくちをつく。

ラブホ街を抜けた高速の側道は暗い。
しばらく進んでいると、軽自動車が車のライトに浮かび上がって見えた。
不自然に斜めに向いて、リアがなんか浮いている。
(はまったな)どうやら何かの拍子に側溝にタイヤをはまらせたらしい。
女性が二人、立ち往生しているのが見えた。

(お気の毒。手伝ってもいいけど、仕事中だし、面倒だし・・ま、JAFでも呼ぶでしょ)
俺は無情にもシカトしてその場を通り抜けた。と、
「おい」
「うわ、イッチーさん(先輩の名前)、起きてたんスか?」
いつの間にか起きていた先輩が俺を呼びとめた。

「今の女だったろ?車戻せ、手伝うぞ」
「・・はあ」
【めんどくさいっス】ともいえず、適当なところで車をUターン。
「お前には社会常識がないのか」「だから女にもてねえんだ」
「チャンスを生かしてこその社会人だ」「女が困ってたら助けるのは、男の義務だ」
先輩の小言を適当に相槌うちながら来た道を戻る。再び軽自動車が見えてきた。

さっきと同じ状態で止まっている(当り前か)。女性も同じ立ち位置だ。
車から15m位まで近づいて、
「この辺で止めますね」車を減速させる。
「おい、まて、やっぱまて、スルー、いけ」
「え、なんスか」
聞き返しながらなおも減速させる俺に
「とまんなオラア!」
先輩、キレ気味に命令した。しょうがない。俺は再びスルーして走り抜けた。

さすがに今来た道は通りにくいので、別のちょっとした山道を走る、夜の山道。
車は俺の車と、後ろを走るもう一台だけだ。対向車もない。
俺は少し飛ばし気味に運転しながら、先輩に聞いてみた。
「なんでさっき助けるのやめたんスか?」

【思ったより深くはまってたから】【女二人だと思ったらよく見たらアベックだった】
そんな答えを思い描いていた俺に、先輩一言、
「ブスだった」

(なんだよそれ!何が社会正義だ!何が男の義務だあ!)おれは心の中でシャウトした。
ほどなくして先輩が、
「あのさあ」
「なんスか?」
(絶対明日女子社員にこの話流す!)そう思いながら返事をすると、

「お前、最近女拉致って殺した覚えある?」
「な、なんスかそれ、ないっスよ」
「だよな」
「当り前じゃないスか」
「そーだよな」
「勘弁してくださいよ」

そういいながら俺はふと気づいた。
後ろの車、さっきから全く距離が変わっていない。
車幅からして多分軽自動車。
山道だから当然登り道、カーブも多い。なのに全く距離が変わらないって・・・。

と、当然後ろの車がハイビームに変え、加速をしだした。
一気に車間距離がつまる。完全にあおられている。いまにもぶつかりそうになった。
(なになに、何だこいつ??)眩しくってミラーが見にくい。ていうか前も見にくい。
(道を譲るか?)でも山道だ。しばらく行かないと車を止める場所なんてない。
「パーパー!パパパー!」
クラクションまで鳴らしてきやがった。
俺だってそこそこスピードは出してる。そこまでされるいわれなんてない。
(ひょっとして、キ●ガイ?もしくは強盗?)
心臓の鼓動が速くなった。

「車とめろ」先輩が鋭く言った。
「でも、山道っスよ」
「早くしろ!」
しょうがない。俺はあおられながらそのまま減速した。
不思議と後ろの車も同じように減速する。今にもあたりそうなのに・・・。
結局、2台はそのまま停車した。

「話つけてくる、お前は車から出んな」
「は、はあ」
(【おまえも来い】とか言われなくてよかった)チキンなことを考えながらルームミラー越しに後ろの様子を見る。
眩しくてよくわからん。今頃乱闘でもしてるだろうか?
先輩戻ってきたらダッシュしないと・・・。そう思いながら適当にルームミラーを調整する。

ガタガタやっているうちに、ふと後部座席が写った。
道具箱、資料を入れたファイルケース、小型の脚立・・現場回りの道具が雑然と積みあがっている。
・・そんなのにまぎれながら、「手」が見えた。
(え?)
「手」はミラーを動かしながら一瞬見えただけで、すぐに視界から外れる。
(いまの、なに?)

ミラーを戻して確認すべきか?でも、ほんとに手だったらどうしよう?
ミラーをもったまましばし硬直する。と、ミラーの下側から、今度は見間違いのない、男の右手が写り込んだ。
座席の肩をゆっくりとつかむ。
やたらと筋張った、生気のない手、人形のような、いや、、、

死人のような、青白い手・・・

能天気に「FANCASTIC」を流していたカーステが止まる。代わりに

【くうおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああ】

谷底から響いてくるような、声とも風ともつかない音が響いてきた。
ミラーの中では、座席の首のところからゆっくりと、今度は髪の毛のようなものが下から上がってくる。
(なにこれ?やばい、やばいヤバいヤバいヤバいヤバい)
心臓の音が耳元から聞こえる。脇の下から汗が垂れてきた。
逃げるよな、こっから逃げたほうがいいよな。

【お前は車から出んな】

先輩の声が頭をかすめる、でも、でも・・・
髪の毛の間から、ついに目が覗く。般若の面みたいなそれと、目が、あった。

「出るっきゃないっしょおお!!」俺は思いっきりサイドブレーキを引き、ドアに手をかけた。
と、「ガチャ」後部座席の扉が開く。

「なにしとんだボケがあ!」先輩の声が響き渡る。聞きなれた怒声が、天使の声に聞こえた。

先輩は後ろの奴の頭をつかむと、無理やり外に引きずり出す。
【ごぁぁぁぁぁ!】
「ごあ、じゃねえ!クソがああ!!」

しばらく外から「てめえ、おら!」「人が寝てると思いやがって!」
怒声と何かを殴りつける音が響いていた。

俺はその間、ドアにしがみつき、泣きながら目をつぶっていた。


「話ついたぞ」

どれぐらいの時間が経っただろうか。俺は先輩の声で気がついた。
カーステからは「楽園ベイベー」が流れている。

「ああ、あうあう」情けないことに、まともに言葉が出ない。正直、小便出てると思った。
「運転してやる。変われ」
俺はプルプルしながら助手席に移った。
気づいたら、後ろの車はもうどこにもなかった。

夜の山道を、再び事務所に向かう。もう、それ以上この日は何も起こらなかった。

「さっきの女どもな、いい奴だった。青白おやじのこと教えてくれたんだわ」
帰りの道、先輩は独り言のように呟いた。そして、
「あー、寝すぎた」といった。

その日は事務所に着いたら速攻で家に帰り、電気をつけて寝た。


「夜、現場からイッチーと二人で帰って来た俺君が、目を真っ赤にしてすぐに帰った。」
「イッチーと俺君に、なにかあった。」
「イッチーと俺君は、できている」
職場に妙な噂が流れ始めたのはそれから間もなくのことだった。


以上です。お付き合いのほど、ありがとうございまし
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